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Wi-Fi 6、Wi-Fi 6E、Wi-Fi 7のどれを選ぶ?
オフィス向け無線規格の選び方

2025/01/31

オフィスにおけるネットワーク環境は、業務効率やセキュリティ、さらには従業員の働きやすさに大きく影響します。特に近年では、リモート会議や大容量データのやり取りが当たり前となり、無線LANの通信速度や安定性は企業にとって欠かせないインフラ要素のひとつです。その一方で、Wi-Fi規格は着実に進化を続けており、現在は主流のWi-Fi 6(IEEE 802.11ax)から、6GHz帯に対応したWi-Fi 6E、そして次世代のWi-Fi 7(IEEE 802.11be)へと注目が移りつつあります。
しかし「アクセスポイントを導入するとき、どの規格を選べばよいのか」「Wi-Fi 7を今すぐ導入すべきなのか」などの疑問をお持ちの企業担当者やシステムインテグレータの方は多いのではないでしょうか。本記事では、Wi-Fi 6/Wi-Fi 6E/Wi-Fi 7それぞれの特徴やメリット・デメリットをわかりやすく整理し、最適な選択肢をご紹介します。オフィスの規模や利用状況に合わせたWi-Fi選びの参考にしていただければ幸いです。

オフィス用無線LANの選択肢を理解する

Wi-Fi 6とWi-Fi 6EとWi-Fi 7の基本的な違い

企業の情報システム担当者や、システムインテグレータの営業・技術担当者がまず押さえておきたいのは、Wi-Fi 6、Wi-Fi 6E、Wi-Fi 7それぞれがどのような技術的特徴を持つか、という点です。

  • Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)
    2.4GHz帯および5GHz帯を利用し、最大9.6Gbps程度の理論速度を可能にします。OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)やMU-MIMO(Multi-User Multiple Input Multiple Output)による効率的な通信が特長で、現在もっとも普及が進んでいる規格です。機器の価格も比較的安価で導入しやすく、大多数の端末がWi-Fi 6をサポートしていることから、コストパフォーマンスに優れています。

  • Wi-Fi 6E
    Wi-Fi 6の技術を6GHz帯に拡張したものです。6GHz帯は比較的新しく割り当てられた帯域であり、他のデバイスからの干渉が少ないため、理論上はより高速・安定した通信が期待できます。電波干渉が軽減されやすい一方で、電波の到達距離は5GHz帯よりも短くなる傾向があるため、アクセスポイントの配置や環境設計を工夫する必要があります。また地域によっては6GHz帯の利用制限がある場合もあるため、導入時には法規制を確認することが大切です。

  • Wi-Fi 7(IEEE 802.11be)
    現時点では次世代規格として開発が進んでおり、320MHz幅のチャネルや*MLO(Multi-Link Operation)*などの革新的な機能によって、理論速度は最大46Gbpsにも達するといわれます。ただし対応機器が非常に少なく、さらに企業向けのPCやスマートフォンなどが本格的にWi-Fi 7に対応するまでにはまだ時間がかかりそうです。最先端の通信速度や大規模環境での同時接続性に魅力はありますが、導入コストや安定性の観点からは慎重な検討が必要です。

オフィス環境での無線LANの重要性

オフィスでは、PCやスマートフォン、タブレット、プリンタ、さらにはIoT機器など、多種多様な端末がアクセスポイントに接続されます。人数やデバイス数が多いほど、通信速度の低下や電波干渉による不安定化が起こりやすくなります。
また、ビデオ会議システムやクラウド型のERP・CRMシステムを利用する機会が増えた現在、無線LANのパフォーマンスが業務効率に直結するケースも少なくありません。社員や来訪者が快適にネットワークを利用できる環境を整備することは、企業の生産性向上、ひいては競争力の強化にも繋がります。

将来性を考慮したWi-Fiの選び方

無線LAN規格の進化は速く、数年ごとに新たな規格が登場します。しかし、最新規格が常に最適というわけではありません。以下のポイントから導入時期を見極めることが大切です。

  1. 既存端末との互換性
    新しい規格を導入しても、社員が使っているPCやスマートフォンが非対応であれば、その恩恵を得にくいのが現実です。

  2. 成熟度・安定性
    規格が新しいほど運用実績が少なく、ソフトウェアやファームウェアのアップデート頻度も高めになる可能性があります。

  3. コスト面
    最新規格に対応したアクセスポイントは高価なことが多いため、コストと得られるパフォーマンス改善効果のバランスを見極めることが重要です。

ネットワークの拡張性と互換性を検討する

企業が拠点を増やしたり組織が大きくなるにつれ、ネットワークへの要求は高まります。同時接続端末数の増加や大容量通信の需要が生じるときに、柔軟に拡張や切り替えができるかどうかは大きな検討材料です。

  • オフィス内の電波干渉対策
    既存の2.4GHz帯や5GHz帯では、他社オフィスや周辺機器との干渉が激しいケースがあります。6GHz帯を活用するWi-Fi 6Eはその点で優位ですが、到達距離の問題もあるため、APの追加設置や配置設計に注意しましょう。

  • 古い規格との共存
    Wi-Fi 7対応ルーターを導入しても、Wi-Fi 5やWi-Fi 6の端末が混在する環境では、全員が最大速度を享受できるわけではありません。レガシー規格との共存も考慮した設計が必要です。

コストパフォーマンスを比較する

オフィス向けにアクセスポイントを導入する場合、ハードウェア費用だけでなく、設置工事費、保守契約費、ライセンス費用などが発生することがあります。

  • 「Wi-Fi 6」はすでに普及が進んでおり、市場価格も安定。比較的コストを抑えながら安定性や高速性を得られるバランスの良い規格です。

  • 「Wi-Fi 6E」は6GHz帯対応で干渉を受けにくい反面、到達距離の問題や機器の価格がやや高めになる傾向があります。

  • 「Wi-Fi 7」は導入コストがさらに高額になる見込みで、現状では企業としてROI(投資対効果)を見極める必要があるでしょう。

Wi-Fi 7とWi-Fi 6/6Eの違いは?

46Gbpsの超高速通信

Wi-Fi 7の理論上の最大通信速度は46Gbpsともいわれ、Wi-Fi 6(最大9.6Gbps程度)と比べると圧倒的な高速化が期待されています。大容量ファイルの転送や超高解像度動画のストリーミングなどにおいて、理論値上は優れた性能を発揮します。ただし実際には端末の対応状況、回線速度、アクセスポイントの配置、電波環境などによって通信速度は大きく変動します。

同時接続強化

Wi-Fi 7ではOFDMAやMU-MIMOなど、Wi-Fi 6で導入された技術をさらに進化させ、大量の端末を同時に接続しても効率的に通信できるよう最適化が図られています。大規模オフィスで多数のPC・スマートフォン・タブレットが同時通信する場合、Wi-Fi 7の同時接続能力は大きな魅力となるでしょう。

MLO機能で通信品質の大幅向上

Wi-Fi 7の注目すべき新機能が「MLO(Multi-Link Operation)」です。これは複数の周波数帯やチャネルを束ねることで、通信を高速かつ安定させる技術です。例えば5GHz帯と6GHz帯を同時に利用することで、それぞれの帯域の混雑状況に応じて適切に通信路を切り替えたり並列化したりすることができます。結果として、レイテンシの低減や通信の安定化に寄与します。

Wi-Fi 7の新しい機能

Wi-Fi 7では上記以外にも、「320MHz幅のチャネル」を使ったさらなる大容量化や、変調方式の高度化(例えば4K~16K QAMなど)、自動チャンネル選択の高精度化など、多角的に通信効率を高める技術が検討されています。 一方で、まだ正式な規格策定が完了していない部分も多く、市販されている対応機器も限られる状況です。現時点でWi-Fi 7対応アクセスポイントを導入しても、その性能をフルに活かせる端末は限られているのが実情といえます。

オフィス環境に適したWi-Fiの選び方

オフィスの規模と利用状況に応じた選択

  • 「小~中規模オフィス」
    社内LANの通信速度に大きな不満がない場合は、コストを抑えられるWi-Fi 6、あるいは電波干渉が気になるならWi-Fi 6Eへのアップグレードが現実的です。6GHz帯を活用できる環境ならWi-Fi 6Eを検討するメリットがありますが、カバー範囲を広げるにはAPの設置数が増える可能性があります。

  • 「大規模オフィス」
    既に5GHz帯が混雑しているオフィスビルでは、6GHz帯の利用は魅力的です。ただし将来的に対応端末が増えるまでの間は、導入メリットをどの程度享受できるのかを見極める必要があります。Wi-Fi 7導入をいち早く検討する場合も、対応PCや業務アプリケーションが少ない段階では投資効果が低くなるかもしれません。

セキュリティ面での考慮点

  • 「WPA3対応」
    最新の暗号化規格であるWPA3は、Wi-Fi 6以降のアクセスポイントで対応している機種が主流です。業務上、機密性の高い情報を扱う場合は、AP・端末ともにWPA3を活用できるか確認しましょう。

  • 「ゲストアクセスやVLAN構成」
    来訪者用のネットワークと社内ネットワークを物理的または論理的に分離し、
    セキュリティ事故を未然に防ぐ設計が必要です。Wi-Fi 6EやWi-Fi 7の対応以前に、運用上のポリシー策定も大切な要素となります。

従業員の利便性を最大化するために

  • 「ローミング性能」
    大きなオフィスやフロアが複数ある場合、アクセスポイント間を移動しても途切れなく接続できるローミング性能が重要です。

  • 「通信の安定性」
    「高速な瞬間的通信」よりも「安定した速度」を重視するケースも多いです。ZoomやTeamsなどのオンライン会議ツールを多数同時使用する企業では、混雑しがちな周波数帯の回避策としてWi-Fi 6Eの6GHz帯を活用する選択肢は有効です。

  • 「端末の消費電力」
    最新規格ほど省電力化が進んでいるといわれていますが、実際にはデバイスごとの対応状況やファームウェアにも左右されます。導入前に端末側の対応・メリットも確認しましょう。

ネットワーク管理のしやすさ

  • 「クラウド管理システム」
    法人向けアクセスポイントの多くは、クラウドコントローラを利用して複数拠点や多数のデバイスを一元管理できます。Wi-Fi 6EやWi-Fi 7だからといって特別管理が難しくなるわけではありませんが、対応プラットフォームかどうかは事前に要確認です。

  • 「将来的な拡張」
    拠点拡大やレイアウト変更時にアクセスポイントを追加しやすいかどうか、ライセンス費用がどの程度必要か、といった要素も重要です。導入後数年を見据えた拡張性を確保しておくことが、無駄なコストの発生を防ぐポイントになります。

まとめ

Wi-Fi 6, Wi-Fi 6E, Wi-Fi 7どれを選ぶか

  1. すぐに導入したい・現在の速度に大きな不満がない場合:Wi-Fi 6またはWi-Fi 6E
    - Wi-Fi 6は機器価格が安定しており、ネットワーク構築コストを抑えつつ十分な速度・安定性を得られます。
    - 電波干渉が深刻なオフィスビルであれば、Wi-Fi 6Eを選択して6GHz帯を活かすことで安定性向上が見込めますが、電波到達距離の短さには注意しましょう。

  2. 将来を見据えて最新技術を活用したい場合:Wi-Fi 7
    - 理論上は圧倒的な高速通信と同時接続性能を実現できる次世代規格です。
    - ただし対応端末が少なく、機器も高価になる可能性が高いため、多額の投資が正当されるケースかどうかを慎重に判断する必要があります。

Wi-Fi 7対応の無線アクセスポイントにする必要性は?

現時点では、Wi-Fi 7対応の無線アクセスポイントを導入しても、同等のスペックを活かせるデバイスや端末が少ないため、「時期尚早」と感じる企業も多いでしょう。もちろん大規模オフィスで今後の端末アップデート計画が明確な場合や、最先端のネットワークインフラを構築して将来的な拡張性を重視したいという方針がある場合は検討の余地があります。しかし、多くの中堅・中小企業や一般的な大企業にとっては、まだWi-Fi 6/Wi-Fi 6Eの導入が現実的な選択肢です。

長期的視点で見た最適解

  • 「段階的な導入」
    まずは既存ネットワークをWi-Fi 6、あるいはWi-Fi 6Eにアップグレードし、運用ノウハウを蓄積しながら将来のWi-Fi 7導入に備えるアプローチが安全です。

  • 「用途・規模に応じた柔軟な構成」
    拠点が多数ある企業や電波干渉が深刻なオフィスビルでは、環境に応じてWi-Fi 6Eアクセスポイントを導入し、一部のエリアでは将来的にWi-Fi 7へ移行するなどのハイブリッド構成も検討できます。

  • 「対応端末とのバランス」
    法人向けPCやモバイル端末がWi-Fi 7に対応するまでに少しタイムラグがあるため、その間はWi-Fi 6Eの6GHz帯を活用して混雑を回避するのも有効な施策となります。

総合すると、現在オフィスネットワークに大きな不満がない場合や、多数の端末の入れ替えが近々予定されていない場合は、Wi-Fi 6またはWi-Fi 6Eが最適な選択肢となりやすいでしょう。一方、最先端を求める大規模環境や、将来的な端末更新計画が明確で先行投資が可能な企業では、Wi-Fi 7を早期に検討してみるのも一つの手です。最終的には、予算、運用の手間、導入目的などを総合的に考慮し、自社環境に合った規格を選びましょう。

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